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「置賜自給圏構想を考える会」設立総会 [置賜自給圏構想]

「地域資源を基礎とした『置賜自給圏構想を考える会』」設立総会に参加してきた。

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呼びかけ人


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来賓


1週間前だったろうか、地域の会合で飲んで帰ってきたら設立総会案内のFAXが入っていた。標題を見ただけで気持ちが高ぶった。舟山康江前参院議員とともに自民党の鈴木憲和衆院議員、民主党の近藤洋介衆院議員が呉越同舟で呼びかけ人になっているのもいい。置賜が本気で動き出す気かもしれない、そう思えた。ちょうど「伝国の辞」碑建立報告書「世界に届け!鷹山公精神」にかかりっきりの時で、いよいよ鷹山公が動き出したのかもしれない、そんな気がして報告書のあとがきにこう記した。

「・・・この時代、鷹山公の魂に蘇っていただく仲立ちの役割をいささかなりとも果たし得たでしょうか。甦った鷹山公、これから私たちをどこへと誘(いざな)ってくれるのか、鷹山公精神のおもむくところへ、期待を込めて虚心に従いたいと思います。」


6年前に書いた合併構想をコメント欄まであらためて読んでみた。データは古くなっているが、大筋は今でも十分通用する。あの構想が役立つかもしれない、「また何か始まった」とうさん臭げに見送る家内には「今日の会合は歴史的な会合になるかもしれない」と言いおいて齊藤会長と共にでかけた。


米沢市「伝国の杜」大会議室が会場のはずだった。行ってみて驚いた。大ホールに変更になっていた。大ホールは前の方から半分ぐらいぎっしり埋まっていた。281名の参加と発表された。その他に主催者側が10数人というからほぼ300名の集会だった。

 

吉村知事は置賜総合支庁の産業経済部長の代読だったが、近藤議員、鈴木議員、内谷長井市長、塩田南陽市長、それぞれ気持ちの入った来賓祝辞だった。加藤登紀子さんと飯田哲也NPO法人環境エネルギー政策研究所所長からのメッセージも読み上げられた。

 

事務局からの「設立提案」があった。

 

まず、

「地域の活力低下が叫ばれて久しい。どの自治体も、地域活性化、振興に向けて様々な取り組みを行ってきた。しかし、根本的な解決に至らず、その状況はむしろ厳しさを増している。背景には、国境を越えた企業の利益追求と資源強奪型の経済活動、そして富の一極集中を後押しするグローバルな金融システムがあり、結果として国内の中小零細企業、家族農業、地域経済は先細りの一途をたどっている。」

そして、

「このような現状を打開するために」とつづいて、

「置賜を一つの地域ととらえた『自給圏』をつくることを提案する。」となる。


つまり、ここでいう「現状」とは「先細りの一途」のことである。そこからなんとか抜け出そう、そのために壁を築いて自足できる限り自足するような経済を考えてみよう、ということにすぎない。ここにとどまる限り、全然前向きではない。とどのつまり、「規制緩和と自由競争のもとで地域が生き残るためには、住民が主体的にこの地域を考え、行動するところから始まる。」という結論で、言わないより言ったほうがまし程度のことになりかねないのではないか。今から35年ぐらい前か、宮内商工会青年部時代の「地元で買い物キャンペーン」を思い起こしたのだった。

 

私がFAXを見るなり気持ちが高ぶったのは、6年前の「Non-Poor City構想」を思い起こし、この構想が、設立提案でいうところの、「国境を越えた企業の利益追求と資源強奪型の経済活動、そして富の一極集中を後押しするグローバルな金融システム」という背景の打開にまで及ぶと感じたからである。

 

司会者から質問、意見といわれたのですぐ挙手して発言させていただいた。以下テープおこし。


「白鷹山に『伝国の辞』碑をつくる会の一員として参加させていただきました。この会についてFAXではじめて知ったとき、この会はこれから本気でやっていかなければならない会だと感じました。それで、今日の会合がどれだけ本気の会なのか、それを見させていただくつもりで参りました。実は今から35年ぐらい前、宮内商工会青年部で『地元で買い物キャンペーン』というのをやったことあったんです。宮内から市役所がなくなる、近隣に大型店が進出してくるという非常に厳しい中で『地元で買い物キャンペーン』というのをやって、当時はそれなりの反響はあったんですけど、その後全然それっきりで今の宮内になっているんですけれども、今日これまでの話をお聞きした限りではそのこととどうもだぶってしまう。何かなあと思いますと、結局、かけ声、スローガン、希望だけでは、絶対その時限りになって、先ほど『最後のチャンス』と言われましたけれども、何年か後に『あー、あんなこともやったんだっけなあ』ということで、今以上にさびれた置賜になっている。何が欠けているか。しくみをつくることが必要だと思うんです。どういうしくみか。

 今から6年前、全国で合併が推進されていた頃、『米沢日報』に『Non-Poor City構想』というのを書かせていただきました。『戦略』というか大筋の考え方としては、今日出していただいた考えとほとんどだぶっているんですけれども、ただその『戦術』として、しくみを考えました。それは何かというと、ひとつは地域通貨、もうひとつはベーシックインカムです。詳しく言っていると時間ないんで、要するに、この米沢藩、上杉鷹山公が日本の中でも藩の中では最高レベルまで財政改革を成し遂げたこの上杉藩を一つの圏内として地域通貨を発行する、さらにベーシックインカムによって・・・」


というところで、司会者から「時間がないので」と制されて、「『移ろうままに』という私のブログに書いておきますので詳しくはそちらをお読み下さい」と終った。

 

以下、「米沢日報」に書いた記事の再録。

http://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2008-02-17

http://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2008-02-29

 

   *   *   *   *   *

 

置賜地域の合併ビジョン私案
   

目指せ、経済的・精神的な貧困のないまち
  「NON-POOR CITY 置賜」―
            

 総務省によると、合併に至るにはその2022ヶ月前には法定合併協議会を設置する必要があるという。平成21年3月の新合併特例法期限内実現にはこの5月から7月が目途となる。齋藤弘山形県知事の強い意向を受けて、最近、合併に関して置賜3市5町の首長が色々な形で議論をしようという雰囲気が多少なりとも出てきたことは喜ばしいが、まだ「本気さ」には隔たりがある。

米沢日報の平成19年元旦号に、合併を果たした富塚陽一鶴岡市長のインタビュー記事が載っていた。その中に「これから20年後、30年後先のことを描いて合併を行った。御身が大事で、子孫に何故あのときに合併をしなかったのかと後ろ指を差されたくない。近隣の首長も合併には自然の流れがあった」とあった。自分中心に過去からの成り行きに拠っていたのでは到底合併など覚束ない。今あなた方は20年、30年先の未来に対する責任が問われているのですよ、富塚市長はそう置賜人に対して語りかけられたのではなかったか。

「地方分権」が「地域間競争」の激化を招来することは目に見えている。自治体の体力と未来への構想力が問われる時代であることを深く認識しなければならない。わが置賜は、一つの歴史・伝統・文化を共有する日本でも有数の地域のひとつである。時代はまぎれもなく3市5町の合併による「置賜市」の実現を求めている。この時期にあっての大河ドラマ「天地人」の実現は実に天恵としか言い様がない。この機を逃してはならない。

しかし、ただ合併すればいいというものではない。合併することで何を目指すのか。明確なビジョンを打ち出せるかどうかが鍵である。

 

世界の経済が大きく揺らぎだしたことで誰にも時代の変化が感じ取れるようになってきた。十七世紀以来の近代合理主義、「個」を原理とする社会の限界が見えてきた。その先にあるのは「共感」を原理とする社会である。その方がずっと人間の自然の理にかなっている。若者が「おれが、おれが」を「ウザイ」と言い、また「KY(空気が読めない)」が流行語になったりするのもその流れに置くことができるのかもしれない。いずれにしても、「個」を原理とする市場社会から、「共感」を原理とする地域共同社会重視へと重心が移りつつある。

 

 そうした中で、現代日本の最大の問題は、市場社会が生み出す必然としての「貧困」である。OECD(経済開発協力機構)が行った貧困に関する統計では、日本の相対的貧困率は15.3%で、G8の先進国の中で米国に次いで「堂々たる世界2位」という。採算の合わない仕事に追われるワーキングプア、年収200万円以下の労働者は、1千万人を超え(2006年)、フリーターは201万人(2002年)、ニート62万人(2006)、そして非正規雇用はますます増大。貧困率の高い母子家庭122万世帯(2003年)、高齢者世帯や年金不受給者の増加、さらに自己破産者が約16万人(予備軍は60万人とも言われる)。経済的貧困に連動した社会的排除の問題もある。社会からの孤立はそのまま心のレベルでの貧困問題である。

 

 私は、以上のような現状認識に立って「NON-POOR CITY 置賜」を構想してみた。今日本が抱える問題を「置賜市」を実現することで先陣を切って解決してみようではないかという提案である。

 北欧の貧困率の低さが際立っている。スウェーデン5.3%、フィンランド6.4%、ノルウエー6.3%、デンマーク4.3%等である。『日本の貧困研究』(橘木俊詔・浦川邦夫)によると強い共同体意識があるからという。参加型経営組織、連帯感と助け合い、民主主義の浸透、非格差社会、福祉国家観の啓蒙、公共機関への信頼、公正・平等を優先する心性などが挙げられていた。それがヒントとなった。その骨子を提示してみよう。

 

戦略≫

「棒杭の商い」精神による地域づくり

(1) 豊かな置賜の歴史に根ざす「地域共同体」としての再生。

(2) 農業生産を重視した地域内自給(千人共働き→置賜24万共働き)。

(3) 「助け合い」「譲り合い」をキーワードに損得感情の超克。

 

戦術≫

地域通貨(藩札)の活用によるベーシックインカム(基礎的所得保障)の導入。

(1) 最低時給保障(時給格差の是正)による農林業等保護。

(2) 最低生活保障(高齢者への一律配布)。自主返納制。

(3)期限付き地域通貨。使用税徴収による財源の確保などがある。


※ 「棒杭の商い」:上杉鷹山公の時代の無人販売所。街道の途中に暮らしや旅の必需品が棒杭に下げてありました。鷹山公の善政は人心をも立て直し、いつも金額はぴったり合ったという。旅の人もこの地に入ればおのずとそれに倣ったとのこと。


※ 「千人共働き」:「昔から千人人がいればお互い助け合いながらなんとか生きてゆけたもんだ」という古老のことばが強く心に残っている。

 

戦略レベルでは置賜人にとってとくに目新しいことではない。すでに置賜にある「持続可能な豊かさ」を、先人に感謝しつつ大切に守りつづけていこうというにすぎない。戦術レベルの「地域通貨」については、世界経済の危機が言われる中で大きくクローズアップされつつある。併せて「ベーシックインカム」についての議論も進みつつある。「まず置賜から」の気概をもっての衆知の結集が求められる。タイムリミットは迫っている。 

 

補説≫地域通貨とベーシックインカム

 

平成20年度政府予算案によると、国債残高約553兆円に対する1年分の利子負担は、一般会計歳出約83兆円のうち約9.3兆円で、その割合は11.2%。この割合でゆくと約200兆円の借金を抱える地方財政の利子負担は約3兆円。他に企業会計、家計における借金がある。さらに加えて、商品価格に占める利子分の割合は25%ぐらいになるという。いったい国民全体でどれだけの利子を負担していることになるのだろうか。借金すれば利子を払わなければならない、「地域通貨」はこの常識をひっくり返すところに最大の意義がある。

 

通貨の3大機能として、交換機能、尺度機能、保存機能があり、利子は保存機能に伴う。利子が支払われることで保存機能の肥大化が始まり、結果として富の偏在が生ずる。その分、交換機能、尺度機能は減ぜざるをえない。金が必要なところに金が回ってこない。通貨の三大機能本来のバランスを取り戻さなければならない。通貨の滞留を防ぐためには、保存すればするほど価値が下がるしくみをつくればいい。つまりマイナス利子の導入である。そうなると手元に置くより使った方がいい。どんどん金が回りだす。金の回りがよくなるということは、みんなに仕事がゆき渡るということであり、失業者の減少、ひいては貧困の解決へとつながってゆく。金がないと「安さ」に目が行くが、金があれば「良さ」に目が行く。生活の質的向上が図られる。価格よりも人と人とのつながりが優先されて地元の店が活気づく。採算が合う合わないということよりも、将来にとって何が大事かということが選択の基準になる。おのずと農林業も息を吹き返す。

 

地域通貨は「藩札」を思い起こさせる。藩札は江戸期80%にあたる244藩で発行されたという。3市5町の経常収支比率は18年度決算で飯豊町を除けば他は90%台。長井市に至っては97.8%。人件費や借金払いに追われて将来を考える余裕など生まれようもないのが実態だろう。このままでいいわけがない。公共事業の代金の一部を市内だけで通用する藩札によって支払うような仕組みをつくることはできまいか。「地方銀行が発行元になって、日銀と同じように自分の銀行の担保をつけて地域通貨を発行する。それを県が保証する。県は土木事業を行っていい」という千葉商科大学加藤寛前学長の提言もある。幕末期、福井藩の由利公正は藩内の富裕な農民や商人拠出させた資金を担保に藩札を5万両発行し、この藩札を養蚕・生糸などの有望な殖産事業に貸し付けることで、わずか3年にして50万両の金銀備蓄を達成したともいう。

 

地域通貨については世界各地に実践例がある。日本にも多い。知れば知るほど宝の山である。自治体での取り組みもちらほら始まっている。先陣を切る意気込みで取り組むに値するテーマであると断言していい。

 

ベーシックインカムは、「働くことで所得を得る」のではなく「生きているから所得を得る」という考えに基づく。そのことで、「金にならない仕事はやらない」という考えから解放される。「仕事」とは本来「人のために役に立つこと」だったのではなかったか。目先にこだわらない本来の「仕事」が息を吹き返す。完全な実現には程遠いが、地域通貨の活用でその考えを取り入れることは可能になる。

 

いま、置賜の歴史が「置賜市」の実現を促しているように思えてしょうがない。先般、安部米沢市長に、「あなたのリーダーシップにかかっている」と直訴した。まだ間に合う。世界に冠たる置賜が目の前にある。

 

   *   *   *   *   *

 

とりあえずここまで。(つづく)



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めい

ベーシックインカムがフィンランドで導入具体化が検討されだしたのを機に、日本でも議論が盛り上がりつつあります。以下、根本的な問題です。コメント欄も重要です。

   *   *   *   *   *

全国民に月額11万支給で話題のベーシックインカムの罠…国民をどんどん貧困に(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan104/msg/171.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 1 月 02 日 00:40:45: igsppGRN/E9PQ

全国民に月額11万支給で話題のベーシックインカムの罠…国民をどんどん貧困に
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13130.html
2016.01.02 文=筈井利人/経済ジャーナリスト Business Journal


 北欧フィンランドは、約540万人の全国民に月額800ユーロ(約11万円)の「ベーシックインカム」を支給する検討を始めた。2016年11月までに最終決定される見通しで、導入されれば世界初となる。

 まだ実際に導入が決まったわけではないが、反響は大きい。日本でも今月このニュースが報じられると、インターネット上で「壮大な社会実験が始まった」「日本も導入を検討してもよい」などと称賛する声が上がった。

 ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策である。社会保険など従来の所得保障がなんらかの受給資格を設けているのに対し、無条件で給付するのが最大の特徴だ。

 全国民に漏れなく最低限度の収入を保障することで、「ワーキングプアなど従来の社会保障で救えなかった人々も助けることができる」と期待する声がある。

 だが、本当にベーシックインカムで貧困層を救うことはできるのだろうか。

 ベーシックインカムを支持する人々が、忘れてしまっていることがある。それは、貧しさを救うために本当に必要なのは、お金ではないということだ。必要なのは食品、衣類、住居をはじめとするモノである。お金を食べたり着たりすることはできないのだから。

 ベーシックインカム導入後、支給された金額で必要なモノが必要な量だけ買えるのであれば、問題はない。しかし、もしベーシックインカムを導入した影響で国のモノを生産する力(生産力)が落ちてしまうようだと、話は違う。必要なモノが足りなくなり、手に入りにくくなってしまうからだ。

■生産力にマイナス

 実際、ベーシックインカムを導入すると、いくつかの理由により、生産力にマイナスの影響を及ぼす。

 まず、働かなくても一定の収入を得られるため、勤労意欲が低下する。この指摘に対しては、「稼ぎが一定以上になると打ち切られる生活保護と違い、ベーシックインカムは所得水準にかかわらず支給されるので、勤労意欲を阻害することはない」という反論がある。

 確かに、ベーシックインカムがたとえば1人あたり月5万円程度の比較的少額であれば、それが支給されたからといって、「もう働くのはやめて遊んで暮らそう」などと考える人はいないだろう。ベーシックインカムがこの程度の金額にとどまっていれば、生産力はさほど落ちないとみられる。

 しかし、月々たった5万円では「生活に最低限必要な収入」とはいいにくい。ベーシックインカムとうたうからには、日本の場合、フィンランド並みの10万円超を念頭に、もっと上積みが求められるはずである。そして実際にもっと多い金額が支給されれば、文字どおりそれがあれば最低限の生活はできるのだから、働かない人は確実に増える。これは生産力を低下させる。

 ベーシックインカムを支持する人のなかには、ホリエモンこと堀江貴文氏のように、「世の中には働くのが好きで働いているような一握りの人がいて、イノベーション(技術革新)を生み出し、社会の富を作り上げている。だから、働きたくない人は働かなくてもいい」という意見もある。しかし、この考えも生産力のことを忘れている。

 なるほど、商品のアイデアを生み出すのは、たいてい一握りの才能ある企業家であるが、それを現実の商品として製造・販売する仕事は、一握りの企業家だけではできない。多くの働き手がいる。ふつうの人々がベーシックインカムに満足して働かなかったら、生産力はガタ落ちとなり、社会を物質的に豊かにすることはできない。

■貧しい人々をもっと貧しく

 ベーシックインカムが生産力を衰えさせる原因は、勤労意欲の低下だけではない。もし財源として増税が必要になれば、それも生産力にマイナスの影響を及ぼす。

 現代経済の高い生産力を支えるのは、製造の機械化である。増税が実施されると、機械化投資に回す資金が減り、生産力の低下につながる。

 企業の投資に直接響く法人税は、さいわい減税の議論が進んでいる。だが消費税や所得税など個人が負担する税金でも、増税されれば投資に影響する。個人は貯蓄から銀行預金や株式購入を通じ、企業に資金を供給しているからである。増税で個人に貯蓄の余裕がなくなれば、企業に流れる資金は減り、生産力の低下に結びつく。

 資産税や相続税など富裕層への課税が強まれば、堀江氏が述べたような一握りの才能ある企業家が、日本を離れてしまう恐れもある。これも生産力にはマイナスだ。

 ベーシックインカム導入に伴い増税が実施される可能性は大きい。従来の社会保障を撤廃することで浮く財源もあるが、それによって支給できるベーシックインカムはせいぜい月5万円程度といわれる。前述のように、わずかそれだけでは「生活に最低限必要な収入」とはいえないとして、上乗せの圧力が強まるだろう。そうなれば増税は避けられない。

 しかも厄介なことに、「生活に最低限必要な収入」は、本来の最低限を超えてどんどん膨らむ恐れがある。政治家が有権者の人気を取りたがるからである。

 従来の社会保障では、社会保険料の負担を抑え有権者の人気を取るため、歴代政権によって税金が安易に投入されてきた。ベーシックインカムの額が国政選挙のたびに引き上げられる事態はたやすく想像できる。

 有権者は一時喜ぶかもしれないが、増税や勤労意欲の低下で生産力が落ち、モノ不足で物価が上がり、ベーシックインカムのさらなる引き上げや他の社会保障の復活が必要になるという悪循環に陥るのは確実である。

 貧しい人々に必要なモノを行き渡らせるためには、まず十分な量のモノを生産しなければならない。ベーシックインカムは、従来の社会保障と同じかそれ以上に国の生産力を衰えさせ、貧しい人々をむしろもっと貧しくするだろう。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)  
  
コメント

1. 2016年1月02日 01:17:50 : RvXNUj2ccQ : 6[1]
▲△▽▼
生産力も何も機械がする時代になるからベーシックインカムと言っているのに、この文系馬鹿をどうにかしろ

2. 2016年1月02日 04:33:31 : v1gbxz7HNs : Ay@h0DQyQEc[186]
▲△▽▼
生産力が必要がない、ということが理解できていないのだ。
しかしそれだけではない。
これは100年前から議論されていることだが、本質的に怠惰である人間を働かせるために貧困は必要である、とする意見がある。これが転じて、大衆を搾取するためには貧困を必要としている。飢えた人間は握り飯一つで戦地へでも行く。完璧に支配できる。つまり貧困が無くなっては困る奴がいるということであろう。

奴等の論理に理解を示す必要はない。
自分の利益だけを主張し、他人の利益は徹底的に否定すればいい。
大体、その自分だけの利益とされるものは、人類のうち99%の利益を代弁するものに他ならないのである。

3. 2016年1月02日 07:02:43 : SBjesYXU36 : MwcDSEr5c3I[8]
▲△▽▼
恐らく、IT、ロボット化で人間が働かなくてもよい生産状況と言うのは
劇的に増えてきているし、今後ますます増えることは間違いないと思う。
それに見合ったベーシックインカムは当然ありだとは思うけどね。

by めい (2016-01-02 08:17) 

めい

フィンランドのベーシックインカムの話題、広がっています。

   *   *   *   *   *

全国民に月11万円 フィンランド“新保障制度”は成功する?(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/15/hasan104/msg/239.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 1 月 05 日 14:37:26: igsppGRN/E9PQ

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172700
2016年1月5日 日刊ゲンダイ


 北欧フィンランドが導入を検討している「ベーシック・インカム」(最低生活保障)は成功するのか。世界中が注目している。

 フィンランドのシピラ首相は昨年、ベーシック・インカム導入の検討を宣言。早ければ2017年から2年間、試験的に導入する予定だ。世論調査では国民の7割が導入を支持しているという。

「フィンランド政府が考えているベーシック・インカム制度は、乱暴にいうと、複雑化した社会保障制度を廃止する代わりに、全国民540万人に毎月800ユーロ(約11万円)を無条件に支給するというもの。導入が決まれば世界初。オランダ第4の都市ユトレヒトも試験的な導入を決めています」(民間シンクタンク研究員)

「年金」「雇用保険」「生活保護」を廃止し、全国民に毎月、一定額を支給するベーシック・インカムは、メリットが大きい。最大のメリットは、社会保障制度が簡素化し、年金機構などの役所もいらなくなることだ。自治体が行っている「生活保護」などの業務も不要となる。究極の行革になる。

「ベーシック・インカム」として毎月5万円を支給されれば、4人家族なら月に20万円。最低限の生活が保障されていれば、次の仕事も探しやすくなる。ワーキングプアの救済にもつながる。経済評論家の荻原博子氏はこう言う。

「ベーシック・インカムの基本的な考えは、セーフティーネットであり、富の再分配です。日本でもやる気になれば実現可能だと思う。行き過ぎた資本主義は、どうしても富が偏在してしまう。偏った富をどうやって再分配するか。すべての高齢者に毎月7万円程度の年金を支給する“最低保障年金制度”でもいい。ベーシック・インカムも、選択肢のひとつとして考えてもいいと思う」

 すでに日本の「年金制度」は破綻し、安倍政権は「生活保護」をどんどん削っている。フィンランドが成功したら、日本も本気で導入を考えた方がいいのではないか。

by めい (2016-01-06 10:48) 

めい

いよいよ導入具体化、フィンランド。

   *   *   *   *   *

ベーシックインカム、フィンランドが試験導入。国家レベルで初(ニューズウィーク)
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/886.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 1 月 18 日 13:25:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
        ベーシックインカム制度の導入を求めてスイスでデモが行われた。2016年4月 Arnd Wiegmann-REUTERS

ベーシックインカム、フィンランドが試験導入。国家レベルで初
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6733.php
2017年1月17日(火)08時20分 Rio Nishiyama ニューズウィーク

<1月1日、フィンランドがベーシック・インカム制度を導入した。2000人の失業者に対して月に560€(日本円にして約6万8000円)を支払うというもので、国家レベルでははじめて。現代の社会福祉のあらたな可能性としてにわかに脚光を集めている>

 2017年1月1日、フィンランドが国家レベルでは欧州ではじめて試験的なベーシックインカムの導入を開始した。このプロジェクトでは、1月から2018年12月まで、無作為に選出された2000人の失業者に対して月に560€(日本円にして約6万8000円)を支払うというもの。2年間の実験で、ベーシックインカムの導入が失業率の低下に影響をもたらすのかを調べるのだという。

 近年、ヨーロッパを中心にベーシックインカムの導入の是非がたびたび議論されてきた。ヨーロッパ諸国の社会保障においては、その制度があまりに複雑で多層的であるため、社会保障を受けている失業者がその恩恵を受けられなくなってしまうという不安から、低収入あるいは短期の仕事に就きたがらなくなってしまうという問題が起こっていた。ベーシックインカムとは「政府による、無条件の最低限生活保障の定期的な支給」であるため、就業による支給打ち切りの心配がない。よって、たとえ低収入の仕事であっても失業者は気軽に次の仕事に就くことができるため、失業率が低減する、というのが大枠の論理だ。

 さらに、ベーシックインカムを導入することによって、今まで複雑だった社会保障制度がシンプルになり、よりフェアで効率的な所得分配ができるとも言われる。たとえば、アメリカでは社会保障としてフードスタンプ、医療補助、現金補助が用意されているが、フードスタンプよりも車の修理代のほうが必要な人もいるように、複雑化した社会保障の支給は「被支給者にとって必要と考えられるもの」と「被支給者が本当に必要なもの」のミスマッチを起こしてしまう。ベーシックインカムの導入によって被支給者は自分が本当に必要なものを考え、選択することができる、というのも大きな利点だ。

 このように、現代の社会福祉国家の問題を解決するあらたな可能性となりうるベーシックインカムだが、このフィンランドでの導入決定が行われるまでは国家レベルでの導入は議論の末に見送られてきた。たとえば、スイスでは2016年6月に国民投票によってベーシックインカム導入が否決されている。懐疑派の意見としては、財源確保の不確実性や労働意欲の低減、医療手当などのほかの公的扶助の削減による福祉水準の低下、などがあげられている。

 それでも、長引く経済不況と失業率の上昇から、社会保障制度の見直しは多くの欧米諸国にとって喫緊の問題だ。現状、地域レベルでは、カナダのオンタリオ、カリフォルニアのオークランド、スコットランドのグラスゴー、オランダのユトレヒトなどでベーシックインカムの実験的な導入が計画または議論されている。

【参考記事】人工知能が経済格差と貧困を激化する

 さらに欧州議会では、ロボットの導入による失業率向上の予測から、加盟国にベーシックインカム導入の可能性を検討することを勧告するレポートが発表され、来月本会議で決議されることになっている。人工知能によって近い将来に単純労働がロボットに代替されることが盛んに議論される今日、ベーシックインカムの是非の議論もますます活発化しそうだ。

by めい (2017-01-18 16:19) 

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