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藤森平司先生講演メモ「見守る保育―主体性を育てる」(2) [幼稚園]

本論  現代における育児をどう考えればよいか  

3歳神話の終焉 

○3歳までの育休について

働く女性に手厚い支援 首相「育児休業3年」表明 2013/4/18 21:40 (日本経済新聞)

安倍晋三首相は子供が1歳半になるまで認められている育児休業を3歳まで延ばし、5年間で待機児童ゼロをめざす方針を決めた。19日の経済3団体トップとの会談で協力を要請する。少子高齢化に伴う労働力人口の減少に歯止めをかけるのが狙いだ。仕事と子育ての両立に悩む家庭には朗報と言えるが、実現に向けて給付負担や企業のコスト増大などの課題を克服する具体策が問われる。政府は今後、産業競争力会議(議長・安倍首相)で議論し、成長戦略に織り込む。2014年度の導入をめざす。           

3歳まで育児休業が取るようにしなさい!」と言っても、農家の方は、取れるはずはありませんし、自営で働いている人たちも無理です。大切なのは、子どもを母親だけに押し付けることではなく、社会で育てるという意識だと思います。いつも母親が抱っこしなければならないとか、いつも一緒にいないと愛着形成されないというのは、人類がどのような育児をしてきたかということを見ても間違った考え方のような気がします。       

3歳まで家で育てられるということはどういうことか。その検証をきちんとして欲しい。昔の「3歳神話の復活」というなら間違っている。

○一家族に67人も子供がいる時代とは違う。少子化になって、地域の連帯も少なくなって、しかも核家族になって、その家庭環境で同じような保育をしていたらどんどん歪みが起きてくる。それがいまの若者において問題化している。

→人と関わる力がない。人と関わる経験が薄くなっている。子供集団の力が希薄になっている。

70万人〜150万人とも言われる引きこもり。働こうとしない、現代鬱病、虐待、いじめ

EQ力、SQ力がつくのは幼児期 

アメリカのダニエル・ゴールマンの調査

どんな子供が学校で学力向上し、世の中に出てうまくやれて、自分なりの生き方が出来るか 

IQ(知能。知識能力)の高さはあまり関係ない

→それ以上に関係あるのはEQ力(心の知能 感情知能指数」と訳され、「自分自身と他の人達との感情を理解し、自らもモチベートし、自らの感情と他の人達との諸関係を効果的にマネジメントする能力」と一般的に定義されている。「人生をより良く生きるために必要な能力」)。さらに重要なのがSQ力(社会的知能 「社会性の知能指数」と訳され、「職場内の意欲や他者の能力を引き出すもので、対人関係や社会性に関わる神経回路と内分泌系に支えられている」

学力アップ率、世の中での成功確率も高い。 

それらは幼児教育の間に身につくものである。日本で心配なのは、ゆとり教育、総合学習の見直し→学力重視。知識量の増加。ゆとり教育で育った子供たちが世の中に出た時にどうなっているかを検証しているか。その検証なしに、学力が下がったからゆとり教育の見直し、というのはそれでいいのかどうか。長期的に子供たちの生きる力を考えてゆかねばならない。そういうのが先進国の潮流なのに、日本は、なかなか成熟してゆかない。知能=知識量 → 小学校の学校教育が重要ということになる。しかし、ほんとうに「生きる力』の教育は幼児教育の段階が大切。(EQ ,SQ力)

人類の進化、人間の発達についての考え方が変わってきた

上野国立科学博物館の展示がおもしろい。

私たちの先祖である現生人類(ホモ・サピエンス)が20万年前にアフリカに生まれ、長い生存戦略の末、他のヒト族(ホモ属)たちがすべて絶滅した中、生き残っていきます。そして、6万年前からアフリカから出て、地球上の南極大陸以外のすべての陸地に拡散して行きます。その遥かなる旅路を「グレートジャーニー」といいます。人類はどのように地球上に拡散し、過酷な環境の中、どうやって生きてきたのでしょうか。

 人類の特徴は何かということがいろいろと言われています。言葉が話せる、道具を使える、火を使う、人のまねをするなどです。もう一つ、重要な特徴があると言われています。それは、一つの種が、世界中に分布しているのも特徴であると言われています。どんな砂漠にも、高地にも、酷寒の地にも、あらゆるところに分布しているのです。「世界拡散を成し遂げた人類は、身体能力や知力が今の私たちと変わらない人々だったと考えられています。ですから世界各地の先住民や古代の人々が蓄積した知恵や知識は、私たちと同じレベルの人々が生み出した人類の英知とも言うべきものなのです。私たちは、3.11以降の社会のあり方を考えるときに、彼らのライフスタイルや自然観を顧みることには大きな意味があると考えてこの展覧会を企画しました。」 私は、このころの人類の身体能力と知力は今とほとんど変わらないといっても、その知力を発揮する場面が違っている気がします。というよりも、今は、生きるうえで必要な大切な知力を忘れてしまっている気がします。それは、今までのブログで取り上げた知力はEQですが、たぶん世界へ拡散していった頃の人類は、IQは現代人に比べて劣っているかもしれませんが、EQ能力は非常に優れていると思います。そういう意味では、彼らの生き方から学ぶことは多い気がします。(2013.5.16                                             

サルが人類の先祖ではありません。類人猿→猿人→原人→クロマニヨン人→ネアンデルタール人・・・という進化系列はまちがい。 

私たちの祖先はサルである」ということはずいぶんと前に間違いであることはわかっています。いわゆる人類が猿人から進化したということではないということです。では、人類の進化のなかで私たちが習ったのは、ジャワ原人、北京原人、明石原人などの「原人」と呼ばれるヒト族がいました。また、その後地球上には、私たちの直接先祖であるネアンデルタール人という「旧人」がいます。さらに進化したヒト族としてクロマニョン人という「新人」がいます。ということで、人類は、猿人から原人、そして、旧人、新人と進化して、今の私たちに至ったのだと習いました。しかし、次々の遺跡や骨格が発見されるにつれて、その理論が覆されてされていきました。それに伴って、原人、旧人、新人という呼び方もおかしいと言うことになっています。たとえば、旧人と呼ばれていたネアンデルタール人は、約20万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したといわれるヒト属の一種であり、私たちの祖先であるホモ・サピエンスとは同じ時代を生きているのです。ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは、60から50万年位前に枝分かれした最も近い種で、共に居住地を探してアフリカから旅立っていきます。その後、それぞれがそれぞれの環境の中で生き残るための進化を遂げていきます。ネアンデルタール人は、寒冷地であるヨーロッパに行きます。そこで、次第に体温を保ちやすくするために頑丈な骨格になり、分厚い筋肉を備えていきます。アメリカのストーニー・ブルック大学のシェイ博士は、「ネアンデルタール人はとても強い人類でした。もしいま、彼らが生きていたら、全員オリンピックで金メダルを取っていたでしょう。物を引き裂く力や押す力が特に強く、ホモ・サピエンスの使う倍の太さがある槍を武器に、野牛やマンモスを次々に倒していったのです。男性だけでなく、女性も狩りに参加していました。しかも子どものときから活動的で、5歳になれば自分で獲物を捕らえていたと考えられています。」と言っています。また、肌の色は白く、髪は赤毛が多くなります。太陽の紫外線を浴びることによって体内にビタミンDが合成されるのですが、高緯度地域は年間の日照時間が短いため、それが合成されにくく、“くる病”になる可能性が高くなるために、少しの紫外線でもビタミンDが合成できるように肌が白くなったと言われています。 このネアンデルタール人が、氷河期になり、南下を余儀なくされます。一方、私たちの祖先であるホモ・サピエンスは、アフリカにとどまり、やっとイスラエルに北上していきます。当然、この二つの種は同じ地でぶつかります。しかし、調査の結果、この二つの種は、特にぶつかることもなく、お互いに干渉しないで生活したようです。しかし、なぜか、ホモ・サピエンスは、その地で滅びてしまいます。どうも、協力だけでは生き延びることが出来なかったようです。 しかし、その後不思議なことがおきます。その地で生き残ったネアンデルタール人はすべて滅びてしまいます。全滅です。そのかわりに、再度アフリカから出発したホモ・サピエンスは、その後世界中に広がっていくのです。その二つの種の違いは何でしょうか。それを探ることは、なんだかワクワクします。                                                

私たちのホモサピエンス属以外のヒト属ははすべて全滅する。アフリカの一角にしかいなかったホモサピエンス属が南極大陸以外のすべての大陸に拡散してゆく。(グレイトジャーニー)  拡散してゆくことの不思議さ。砂漠に住み続ける人。アラスカに住み続ける人。アンデスの高地に住み続ける人。なぜそんなところに行くのか。なぜそんなところに住み続けるのか。 それは、私たちの遺伝子。その遺伝子を赤ちゃんは持っている。

 

人間の発達も枝分かれの発達ではなくて並行発達

人類の進化と子供の発達の変化は同じように考えられる。「発達段階」ではなくて「発達過程」。枝分かれの発達ではなくて並行発達。「寝返り→はいはい」ではなく「寝返りもはいはいも一生の間やる」。何歳になったら何が出来るようになる、そのための準備期がちゃんとある。歩行の準備はすでに〇歳から始まっている。3歳から子供は共同的学びをする。学びのための学びはすでに〇歳から始まっている。話せるようになるのはそのまえに人の話を聞くというように話せるようになるための準備の段階がある。発達というのは、赤ちゃんのときからすべてその準備が始まっている。だから赤ちゃんの時期が大事。赤ちゃんの行為行動は将来の発達に結びついている。その準備。 

現在、発達段階という捕らえ方はしなくなりました。発達というのは、階段状に、右肩上がりで、分けて行われるのではないからです。ニュージーランドにおける乳幼児カリキュラムに「テファリキ」(資料2)というものがありますが、そこでは、カリキュラムは、子どもの包括的な発達を反映するべきであるとしています。その具体的な内容として、まず、「エンパワーメント」を挙げています。保育カリキュラムは、「子どもに自ら学び、成長するための力と、“権限”を与えます。」としています。2として、「発達の全体性」が挙げられています。子どもの学びや成長の歩みは、分類できないことと理解し、保育に生かします。たとえば、一つのことに熱中していても、そこから世界を広げ、必要なことを身につけていっているとしています。ここでは、発達は、階段状に上っていくわけでもなく、らせん状に上っていくのでもなく、放射状に広がっていくという概念を持っています。しかし、その発達に影響するものとして「家族と地域社会性」が挙げられています。それは、絶対的なものではなく、家屋や地域社会などのより広い社会は、保育には不可欠な一部と捉えるのです。町で見た消防自動車は、保育のカリキュラムのもととなるのです。それは、すなわち、発達に影響を及ぼすことができる可能性を持っているのです。そこで、影響を及ぼす環境となるためには、その物との「関係性」が重要になります。子どもは、人、場、ものとの応答的、かつ対等な関係を通じて学んでいくからです。(2011.11.8

赤ちゃんは無駄なことはしない。何かしら意味をもっている。 大人から見ると意味のないこと、無駄なことをしているように見えるときでも、赤ちゃんはきっと将来のために必要なことを学んでいるに違いありません。

 人類がある方向性に向かって成長していくとき、それぞれの時期での発達は、その時期にだけ必要なのではなく、その後の生存に備えての発達であるはずです。ある日突然ものがつかめるようになるのではなく、それまでに物をつかむためのさまざまな芽生えが見られるはずです。それが、発達の「連続性」です。「発達の連続性」は、ある方向に向かって、絶える事のない連続的な発達のことです。発達は、休止や飛躍や突然現れるのではなく、表面的には発達が止まっているように見えたとしても、また、突然その発達が現れたとしても、身体や精神はいつでも変化し続けているのです。そのときに、その直訴の時期における行為を保障していくことが大切になります。それが、「今をより善く生きる」ことが「望ましい未来を培う力となる」ということになるのです。
 赤ちゃんが、大人から見ると、意味のないこと、無駄なことをしているように見えるときでも、きっと、将来のために必要なことを学んでいるに違いありません。不用意に制止したり、怒ったり、イライラしたりする前に、少しそんなことを考えてみるといいかもしれません。(2011.6.11

昔は、赤ちゃんは何も出来ないと思われていた。→ 赤ちゃんは他人にやってもらうためにすべて仕掛けている。人生の中で、赤ちゃんの時代がいちばん能動的。 かわいいと思ってもらえるようにしむける。かわいい仕草。かわいい表情。じっと人を見つめる→抱きしめる。授乳する。


大人 息を吸う→肺に入る/ものを食べる→食道を通って胃に入る:それぞれに弁がある。

赤ちゃん 弁がない→息を吸うのもものを食べるのも一緒に出来る。

哺乳瓶でミルクを与えていると、時々休むことがある。それは息を吸うためではなくて、お母さんに「さあもっと飲みなさい」と言わせるため。お母さんに学ばせる。お母さんを育てている。いろんなことで赤ちゃんが母親をしつけてゆく。赤ちゃんは無駄なことをしない。よう

赤ちゃんは鼻から空気を吸い込み続けながら、呼吸を止めることなくオッパイをゴクゴク飲むことができます。成人すると誰もこんなことはできません。おとなが空気を肺に送り込む時は、食べ物を飲み込むことはできません。食べものを飲み込む時は、喉頭蓋で気道をふさいで、呼吸器に食べ物を吸い込まないようにします。考え事をしながらでも食べ物が気道に入ることはありません。たまにむせることはありますが。

赤ちゃんの喉頭蓋は大人より高い位置、第3頸椎あたりにあり、口蓋垂(のどちんこ)が覆いかぶさっているので、喉頭蓋を開閉しなくても、空気も乳も自由に気道、食道に入っていきます。乳が鼻の奥に入ってグズグズ音がしたり、気道に乳がかなり奥まで入ると言われていますが、母乳であれば、原料ははママの血液なので、異物としてアレルギーや嚥下性肺炎の原因になることはありません。ミルクは百%異物ですから気道に入っては困りますが。むしろ、母乳の力で、ウイルスやほこりの侵入を防いでくれます。鼻の奥のグズグズは、鼻詰まりではありません。鼻呼吸しながらオッパイを飲み続けることができれば、鼻は詰まってません。鼻吸いや綿棒はいりません。

鼻から入った空気も、気道だけではなく胃にも入りますから、ゲップを出さないと母乳が口からあふれてくることがありますし、おなかも空気で張っています。ウンウンうなったり、大きな声を出したり、しゃっくりしたり、真っ赤な顔をしていきんだり、ウンチと一緒に頻繁にオナラをしたり。でも私は、空気を飲み込むことも、体外ではじめて使う消化器を早く慣れさせるためのトレーニングに役立っているのではないかと考えています。赤ちゃんは無駄なことはしないように作られているのですから。

赤ちゃんの咽喉は母乳を飲むための構造なので、高さが短い特製です。そのために、赤ちゃんの外見は、あごから下はすぐに胸で、のどがないように見えます。しかし首はだんだんできてきます。成人の喉頭蓋は第5-7頸椎あたりに下がり、咽喉の高さが伸びます。母乳を飲むための咽喉の構造が、言葉を話すことができる構造に変化するのです。

赤ちゃんの咽喉も4か月頃にはかなり伸びて、いろんな音声が出るようになります。眠い泣き声、おなかがすいた泣き声、じれている泣き声が違ってきます。この時期には、舌の押し出し反射が弱くなり、舌の動きが、口に入った乳以外の半固形食を咽喉のほうに送り込むようになりますから、口に入れた離乳食を舌でベーッと押し出してくることがなくなってきます。離乳を始める準備ができたと考えていいでしょう。6か月になったら、離乳を始めましょう。

赤ちゃんの口は、母乳を飲むために、もっといろいろ特別仕様になっています。上下の歯茎の間の、正中(真正面の真ん中)に乳首を噛みつぶさないように隙間があります。口をあけたときに見てみると、上の歯茎の内側に、もうひと並び土手があります。口の中をせまくして、乳輪・乳頭を舌と上あごの間でしっかり固定するためです。両頬のふっくらした脂肪層も口の中をせまくする役に立ちます。舌も、大きく頑丈で強い力をもっています。毎分60-80回、15分以上続けて、ママの乳首を上あごのくぼみに、リズミカルに押しつけることができます。この刺激が、ママの乳腺細胞で母乳を分泌するきっかけをつくるんです。この舌使いもおとなには真似ができない赤ちゃんの特技です。ご自分で試してごらんなさい。30秒でギブアップしますから。

泣き声の仕様はいい加減だけど、母乳を飲むための仕組みは、これでもか、これでもかというほど念入りにできています。赤ちゃんは、こんなにも精巧な母乳を飲むための道具や原始反射をもって生まれてくるんですよ。

いろいろな理由で母乳をあきらめるママは、これまでも、これからも無くならないでしょうけれど、とりあえず、母乳を飲ませてみませんか。赤ちゃんがこんなに準備して生まれてきているんですから。(20130907日)澤田啓司

 

ホモサピエンスの育児は部族(家族)に支えられてはじめて可能liv

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上の子に母乳をやっている間に下の子が出来ると、上の子は下の子を殺そうとする。流産させようとする。→ 母乳をやめさせる。

5ヶ月から8ヶ月で離乳。次の子が産まれる準備。

チンパンジー 4歳で離乳。ずっとお母さんにしがみついた状態で育てる。一人で生きてゆけるようにならないと次の子を産めない。

オラウンター 7歳で離乳。

ゴリラ 3歳で離乳。 ゴリラの育児はオスが手伝う。3歳になるとオスに渡して次の子を産む。

人間は58ヶ月で離乳。次の年に子供が産まれる。→ 他の類人猿に比べれば、普通に考えて不可能。

ホモサピエンスは部族で育てた。

最古の遺跡で発見された穴の開いた貝殻。赤い石。→ 化粧(顔に塗る。首飾り)→ アフリカ 同じ部族の一員であることの証明のため。

赤ちゃんの面倒を見てくれる人の数だけの貝殻を赤ちゃんにつける。

ホモサピエンスはいろいろな人によって育てられてきた。だから58ヶ月での離乳も可能。

一つの部族の中で生活を共にし、食事を共にする。安全を祈る。安全な空間→家 その中にいる人→家族

ホモサピエンスの赤ちゃんは家族の中で育てられてきた。母子の関係だけで育てられてきたのではない。

(つづく)


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