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青木理「なぜ今、徳洲会事件なのか」(「月刊日本」12月号) [徳田虎雄]

なぜ今、徳洲会事件なのか1.jpg
「徳田氏の常人とかけ離れたパワーとバイタリティは多くの批判を招いたが、それと同じくらい多くの人たちを魅了した。私が取材した中で、徳田氏と直接親交のあった人で、彼を悪く言う人はいなかった。ある人が、明治維新の頃には徳田虎雄みたいな奴がいっぱいいたんじゃないか、と言っていたが、そうかもしれないなと思う。」
「徳田氏の悪い点を批判することはもちろん必要だが、汚いものを排除して作られたキレイな社会が居心地が良いかといえば、そんなことは決してない。
キレイな社会というものは弱い。壊れやすい。ちょっとしたウイルスでもすぐに感染して風邪を引いてしまう。そのような社会から優れた人材が輩出されることはないだろう。
徳田氏のような人物がここで切り捨てられてしまうのは、身から出たサビという面があるとはいえ、非常に残念であり、寂しく思う。少なくとも徳田氏がこれまで行なってきた善の部分はしっかりと評価し、世に伝えていく必要があるのではないか。」

『トラオ』の著者、青木理さんへのインタビュー記事です。青木さんは、徳田さんへの徹底取材によるいい記事(「週刊ポスト」→「トラオ」)を書かれていた方です。冷静に徳田さんを、そして「事件」を見ておられると思います。

また聞き手である中村友哉さんの
「安倍政権が検討している混合診療が認められれば、金持ちだけが高度な医療を受けることができる社会が到来するだろう。そうした時期に、それと真っ向から対立する理念を掲げる徳洲会に捜査が入ったというのは、時代を象徴しているように思う。」
という指摘は、辛い指摘です。事件の矛先が亀井静香さん、山田正彦さん、阿部知子さんらに向かうとしたら何をか言わんや。今日予定されている「特定秘密保護法案」成立ともあわせて、日本の「政治社会」を見る限り暗澹たる未来です。しかし、ほんとうの未来は、全然別のところから開けてくると、私には思えています。決して悲観はしていません。

以下、記事の全部をコピーしておきました。記事上をクリックすると拡大します。
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めい

疑惑の“徳洲会マネー” 亀井静香氏「俺はもらってない」〈週刊朝日〉 
http://www.asyura2.com/13/senkyo158/msg/611.html
投稿者 笑坊 日時 2013 年 12 月 29 日 07:17:38: EaaOcpw/cGfrA
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131229-00000000-sasahi-pol
週刊朝日  2014年1月3・10日号

 猪瀬知事がついに辞職に追い込まれた“徳洲会マネー”騒動。検察の今後の動きについて、永田町は戦々恐々としている。恩恵にあずかった人物として報道された政治家の一人、亀井静香氏に話を聞いた。

*  *  *

 2008年に「徳洲会」グループから私が2千万円を受け取りながら、政治資金収支報告書に記載していなかったという報道があったが、ぜんぜん違う。2千万円は徳洲会グループの事務総長だった能宗(のうそう)氏からパーティー券代として預かったものだが、領収証を書くため、徳洲会側の出席者名簿がほしいと要求しても、出さなかったので、これ以上、預かれないと12年末に返しただけ。パーティーに徳洲会側は来なかったので、記載する義務もない。俺はね、長いこと政治家やっているんだから、そんな出処のわからないカネなんかもらいませんよ。

 今回の事件は残念だね。徳田虎雄という男は盟友で、誰もがちゃんとした治療を受けられるような病院をつくるという情熱に燃え、国内だけじゃなく、海外にも病院を次々とつくった。昔は地方出張してもホテルに泊まらず、病院の宿直室に泊まる。そんな男だから、私財を蓄える気はゼロだった。だから、予算などで面倒みてきた。次男の毅君の仲人もした。ところが、虎雄氏が病気してから、女房、娘、息子が会社つくって蓄財し、病院経営に口出ししておかしくなった。虎雄氏は最初、家族を叱っていたが、体が不自由だから、目で訴えるぐらいしかできない。彼の意思が通じなくなり、巨大病院がおかしくなった。

 今回の事件は能宗氏がカネを横領したと徳田家が訴え、それに能宗氏が反論するという内紛で明るみに出た。警察で捜査2課長をやり、こんな事件は反吐(へど)がでるほどやった俺の経験から言わせてもらうと、東京地検、警視庁はいずれ、お手上げになり、何も立件できないよ。検察も振り上げたこぶしを下ろせないから、猪瀬氏を辞任に追い込んだんだろう。

 
by めい (2013-12-30 00:31) 

めい

「徳洲会のドン・徳田虎雄は生きていた。彼の恐ろしいまでのあの形相の捨て身の反撃に、もんどり打ったのは自民党と特捜部だ。」(副島隆彦)

重たい掲示板
[1505] 年の瀬に、副島隆彦から まとめて書いて報告しておきます。
投稿者:副島隆彦
投稿日:2013-12-30 15:17:10
http://www.snsi.jp/bbs/page/1/

   *   *   *   *   *

5.徳洲会(とくしゅうかい)から猪瀬直樹(いのせなおき)都知事に渡された 5千万円の事件。この本当の問題はどこにあるか。猪瀬直樹が、12月18日に辞任表明して、それで、すべてを終わりにしようとしている。

 猪瀬の逮捕も全てなしにして、それで、東京地検特捜部はホウカムリをして、知らぬ顔の半兵衛で、自分たちが逃げ切ることに必死になっている。 

 これは巨大な医療法人である徳洲会を潰そうとした、これまでずっと争い付け狙ってきた厚生労働省の官僚が仕組み、それと、今の東京地検特捜部長とがやった官僚連携の「利権あさり」劇の大失策であり敗北である。徳洲会のドン・徳田虎雄(とくだとらお)は生きていた。
彼の恐ろしいまでのあの形相の捨て身の反撃に、もんどり打ったのは自民党と特捜部だ。 

“ドン・コルレオーネ”は生きていた。ドン虎雄が死ぬ前に手を出してしまった厚生官僚と、検察特捜部は、黙り込んで自分たちの無能を恥じている。功を焦って、小沢一郎を犯罪者に仕立てて、つぶして、自分たち“法の番人“が、”法律という刃物”を使って、違法行為を続けて犯罪者になって指弾を浴びたことの汚名を濯(そそ)ごうとした、愚か者の検察庁幹部と最高裁判所=法務官僚どもの大敗北だ。

 この全国56箇所かの徳洲会の大病院のネットワークを、医療官僚行政と医師会にずっと40年間逆らい続けた虎雄が死んだら、徳田家から奪い取って、厚生官僚どもを天下らせて、そこを自分たちの新しい美味(おい)しい餌場(えさば)にしようと、ほくそ笑んだ厚生官僚たちの大失策だ。 自民党に火が及んだので、自民党が怒った。

 虎雄の、あの車いすのまま出てきて、首も動かない、目だけで字を書いて、それを音声に変えて皆に話した、あの壮絶な反撃は、本当に、すさまじかった。全組織を挙げての命がけの反撃をせよ、の大号令だった。さすが南島の僻地(へきち)の、奄美大島からさえ差別される徳之島(とくのしま)出身の者たちの団結力だ。

 以下に載せる、徳洲会の元事務総長・能宗(のうそう)克行(かつゆき)(57歳)“金庫番”が、徳洲会を裏切り、虎雄と大喧嘩して、そして、自民党政治家たちへの裏献金(ワイロの渡し)を、全部、特捜部にしゃべった。それで、徳洲会潰(つぶ)しとしての、息子の毅(たけし) 衆議院議員を贈賄罪で捕まえることで、この「徳洲会つぶし」を完成しようとした。 

 そして“計画通り”に猪瀬直樹に火がついた。猪瀬ひとりを焼き殺して、それで、終わり、幕引きにしようとしていた。 猪瀬の親分である 石原慎太郎が、5千万円の20倍の10億円ぐらいは、徳洲会からこれまでにもらっている(都知事だから収賄の罪)ことは、国民の多くが今、囁(ささや)き合っている通りである。自民党の大物たち(派閥のボスたち)でひとり2億円ぐらいずつだろう。

 ここまでなら、そこらの床屋談義や、バカ評論家たちでもやっている。ここからが大きな真実だ。ドン・コルレオーネ・虎雄は、「こうなったら、すべて、これまで自民党の大物たちに、能宗(のうそう)が渡した徳洲会のカネのことを 特捜部に 全部話せ」と、巨大な反撃に出た。徳田虎雄は、流石(さすが)であり偉い。

 やはり大した人物だ。私が私の映画評論本で、「映画ゴッドファーザー論」のところで書いたことを思い出して欲しい。  よくまとまっている日刊ゲンダイの記事を載せる。

(転載貼り付け始め)

「 逮捕された能宗元事務総長、民主党政権のメンバーもゾロゾロ 」

「 逮捕された金庫番が暴露 「徳洲会マネー」15億円の譲渡先 」

 2013年12月4日 日刊ゲンダイ

 徳洲会の政界工作の裏の裏まで知り尽くした“金庫番”が逮捕された。警視庁と鹿児島県警に業務上横領の疑いで捕まったのは、グループの元事務総長・能宗(のうそう)克行(かつゆき)容疑者(57)。徳洲会の関連会社の資金3000万円を着服した疑いだが、この男こそ、一連の不正の実態を東京地検特捜部に詳述し、親族逮捕のきっかけをつくったとされる人物だ。

 能宗は関西学院大を卒業後、79年に徳洲会大阪本部に入り、創業者の徳田虎雄の運転手兼秘書になった。猪突猛進な虎雄の指示に従って、信号無視やスピード違反は当たり前の運転術を身につけ、虎雄の信頼を獲得。これを機に30年以上にわたって重用された。

「虎雄氏が難病に侵された後は代弁者として徳洲会マネーを差配し、絶大な権力を誇った。これに“徳洲会が乗っ取られる”と反発したのが、虎雄氏の親族です。腕利きの興信所を雇うなど大金をはたいて能宗が関わった不正なカネの流れを洗い出し、今回の着服容疑を突き付け、今年2月に能宗を懲戒解雇。その後、刑事告訴したのです」(捜査事情通)

■大物政治家の名が次々と

 懲戒解雇の直前、能宗が徳洲会側にカネの流れを説明した「弁明書」が検察の手にわたった。
 「政界工作の裏金をどう捻出し、どう使ってきたのか。大物政治家の実名を挙げながら、80ページ超にわたって、こと細かに説明しています。特捜部にとっては宝の山で、警視庁が今回、捜査にあたったのも検察側に『俺たちの捜査協力者を自らの手で逮捕するわけにはいかない』という負い目があった、ともっぱらです」(捜査事情通)

 メモはマスコミにも出回り、石原慎太郎、亀井静香、鳩山由紀夫など実名で登場する政治家たちは「資金提供はない」と否定しまくっている。

「問題は民主党政権時代の裏工作で、多くは時効を迎えていません。メモには、民主党元衆院議員の高見裕一氏とナント、15億8000万円もの巨額コンサル契約を結び、すでに計2億4140万円を支払ったと記載されています。警視庁は10月末に能宗の着服事件の関係先として、高見氏の自宅を家宅捜索しています」(捜査事情通)

 この高見氏を国交相時代に特別参与に任命したのが、前原誠司だ。メモには徳洲会が取り組んだ「メディカルツーリズム構築へ向けた医療ビザ創設」について、〈高見氏が前原大臣と膝を突き合わせて説いた〉などと克明につづられている。
 
 前原事務所は「一切、関わっていません」と答えたが、メモには高見氏を通じた菅元首相や長妻元厚労相などとの“パイプ”も真偽不明ながら、詳細に書かれている。金庫番の逮捕によって徳洲会捜査は次にどんな展開を見せるのか。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。この 徳洲会の金庫番で、組織の裏切り者の能宗克行(のうそうかつゆき))事務局長からのゲロ、白状を証拠に、徳洲会を叩き潰して、厚生官僚どもに渡そうとした、法務官僚=検察・特捜部の大敗北である。他の自民党の有力政治家たちへの徳洲会からのカネのことをどうしても特捜部は、調べなければならなくなった。困り果てた。 

 そこで、 この能宗 を逮捕したのは、警察(庁)なのである。 検察のバカたちが失策を起こして、自民党の大物たちのカネの受け取りまでバレかけたので、能宗を何が何でも、警察の檻(おり)の中に隠して、二度と表に出さないようにする、ということである。こうなったら犯罪捜査もへったくれもあるものか。自民党とオール官僚どもは、自分たちが逃げを打つことで必死となる。

 ホリエモン事件のときと同じだ。
ホリエモンも、そうやって、右翼ヤクザ者たちから命を狙われた形にして、検察の中に逃げ込ませた。カネとライブドアのすべてをホリエモンから奪い取った。そして命乞いをしたホリエモンを国家が「助けて」やった形にした。
自民党の親分たちに、ホリエモンが、ケイマン諸島の口座の付け替え(送金)で配ったカネの問題は、全て有耶無耶(うやむや)にした。あの”永田メモ”は本物だ。のちに、民主党の永田議員は、精神病の飛び降り自殺、ということにして殺された。 ホリエモン(堀江隆文)のことをネット時代の英雄のように思っている若者たちは、少しは考えなおした方がいいよ。

(中略)

 ここからが本当の政治評論だ。実は、安倍晋三首相と、石原慎太郎は、今度、お台場(フジテレビの建物の隣り)でやろうとしている、 カジノ(博奕場)の法律をドサクサで作るのだが、この突然のカジノ解禁法律 を巡る、利権で争っている。 

 パチンコ・遊技場産業の大手のセガ・サミーが安倍晋三に貢ぎ、アルゼの方が石原慎太郎派だ。 この“カジノ解禁”利権をめぐる争いだ。安倍と石原の二人は、右翼・愛国者としての心情で、韓国(人)、朝鮮(人)たたき、中国との敵対行動で、二人は同志だろうに、などと、甘い考えは持たない方がいい。大物政治家たちは、「国王級」の人間たちだから、自分にカネを貢いでくれる勢力のために動く。

 だから、今度の徳洲会事件で、石原を動けなくして、その政治生命を奪って(「石原さん。首相に逆らうことはできないよ。首相は警察も動かせるんだよ」と)、それで、まだ頭の軽い(人生経験の少ない、という意味)の橋下徹(はしもととおる)を安倍は、自分の方に呼んで、「ねえ、憲法改正を一緒にやろうよ」と引き込もうとしている。これが政治だ。 一気にやるであろうカジノ解禁の法律作り策動や、セガサミー、アルゼのことは、会員ページ用に詳しく書きます。

by めい (2013-12-31 11:33) 

めい

小池百合子都知事誕生についての田中良紹氏の現実政治をふまえた分析です。徳洲会が事件化された背景についても触れられています。

《参議院選挙でもそうだが、自公には「何が何でも権力を手放さない」との迫力を感ずる。しかし野党には「何が何でも権力を奪い取る」という熱気を感じない。正しいことを主張すれば国民は分かってくれるという甘い幻想だけを感ずる。/正しいことを主張すれば国民が理解する世の中なら政治も政治家も必要ない。そうでないから政治が必要なのである。そして最も大事なことは自分たちが主張したい論理を磨くより、国民が何を求めているかを肌身で探ることである。それを野党政治家は分かっていないのではないか。/政治は国民の求めていることに応えることが第一で、自分たちの主張は後回しでもよいと考えなければ、選挙に勝つことなどできない。一方で選挙に勝って権力を握らなければ自分たちの主張を実現することもできない。国民の求めに応えて権力を握り、自分たちが政治を運営する中で自分たちの主張を国民に理解してもらう努力をする。それが政治だと思う。》

   *   *   *   *   *

選挙に勝とうとしない野党は野党ではない
田中良紹 | ジャーナリスト
2016年8月1日 20時17分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakayoshitsugu/20160801-00060630/

東京都知事選挙は予想通り小池百合子氏が圧勝した。公示前は自公が推す増田寛也氏と野党4党が推す鳥越俊太郎氏の組織選挙に対しどこまで票を伸ばせるかと思っていたが、選挙が始まったとたん小池氏の選挙戦術が他を圧倒していると感じた。

小池氏が立候補を決意した動機は、猪瀬、舛添と二代にわたり「政治とカネ」の問題が浮上して都知事を辞めさせられた背景に東京オリンピックの「利権の闇」があることを感じたためだと思っている。

2013年9月にオリンピック東京招致が決定すると、招致活動の先頭に立っていた猪瀬元東京都知事は邪魔な存在と思われたらしく、政界引退後もスポーツ界に影響力を持つ森喜朗氏から批判の声が上がり、東京地検特捜部が医療法人徳洲会グループに絡む政治資金の摘発に動いた。

徳洲会グループの総師徳田虎雄氏は石原慎太郎氏と盟友関係にあり、石原氏から後継指名を受けた猪瀬氏と徳洲会との金の関係を捜査するのが目的ではないかと見ていると、案の定、猪瀬氏は選挙費用として5千万円を徳洲会から借り入れており、その事実が検察からメディアにリークされた。そして猪瀬氏と敵対してきた自民党東京都連を中心に都議会の追及によって猪瀬氏はオリンピック招致決定から3か月で辞任に追い込まれた。

翌14年1月に森氏は念願の東京オリンピック組織委会長に就任するが、就任の日にぶつけるように小泉元総理が細川元総理を担いで東京都知事選立候補の記者会見を開く。それを見て私は「森、小泉、安倍のバトル・ロイアル」というブログを書いた。今回の小池氏の都知事選出馬はそこに遠因を求めることができるかもしれない。

猪瀬氏の後任に自民党都連が担いだのは自民党を除名された舛添要一氏だった。選挙に勝てれば誰でもよい、そして都合が悪くなれば簡単に首を挿げ替える。おそらく舛添氏も官邸や森喜朗氏や東京都連にとって不必要な存在と思われたのだろう。「政治とカネ」の問題を週刊誌にリークされ辞任させられた。

小池氏は安倍官邸、森喜朗氏、自民党東京都連を敵に回す形で出馬に踏み切る。弱小な存在が権力と戦うやり方は関ヶ原ではなく桶狭間の戦い、つまり奇襲戦法しかない。それが6月29日の突然の出馬会見だったと思う。この時点ですべての準備はできていたはずだ。

応援に東京地検特捜部の副部長だった若狭勝衆議院議員が付いたことは「利権の闇」を暴く姿勢を鮮烈に見せつける。また小池氏の選挙戦法は、小沢一郎氏がよく使う田中角栄直伝の必勝法「川上から川下に攻める」やり方であった。離島や山深い地域から都心に向けて小池氏は選挙戦を展開したのである。

それでも大組織に勝つのは容易ではない。ところが増田寛也氏も鳥越俊太郎氏も勝つ選挙ではなく「敵に塩を送る」選挙をやった。そのため小池氏は自民支持者から5割、公明支持者から3割の票を食い、民進、共産からも票を奪う結果を得た。

増田氏の場合はそもそも知名度が低いうえ、応援する側が小池氏批判をするたびに票を逃がす過ちを繰り返す。そのため直近の参議院選挙で自公が獲得した東京での比例票284万票の6割しか獲得できず、小池氏に110万票の大差をつけられた。

より深刻なのは野党4党が推した鳥越俊太郎氏である。直近の参議院選挙で民進、共産、社民、生活の東京での比例獲得票248万票の54%にとどまり、票数は小池氏の半分以下の惨敗だった。

参議院選挙でもそうだが、自公には「何が何でも権力を手放さない」との迫力を感ずる。しかし野党には「何が何でも権力を奪い取る」という熱気を感じない。正しいことを主張すれば国民は分かってくれるという甘い幻想だけを感ずる。

正しいことを主張すれば国民が理解する世の中なら政治も政治家も必要ない。そうでないから政治が必要なのである。そして最も大事なことは自分たちが主張したい論理を磨くより、国民が何を求めているかを肌身で探ることである。それを野党政治家は分かっていないのではないか。

政治は国民の求めていることに応えることが第一で、自分たちの主張は後回しでもよいと考えなければ、選挙に勝つことなどできない。一方で選挙に勝って権力を握らなければ自分たちの主張を実現することもできない。国民の求めに応えて権力を握り、自分たちが政治を運営する中で自分たちの主張を国民に理解してもらう努力をする。それが政治だと思う。

参議院選挙の前に新聞社が行った世論調査によれば、選挙で何をポイントに投票するかと聞かれ、答えの1位は医療・年金、2位が景気・雇用、3位子育て、4位消費税延期、5位安保関連法、6位憲法だった。国民は現在と将来の生活を重視していることが分かる。

そして与党が設定した争点は「アベノミクスのエンジンをさらに吹かせるかどうか」である。国際社会は「アベノミクス」を失敗とみている。ところが野党は国民の関心度が6番目の「憲法改正阻止」を争点に掲げた。

そして「改憲勢力3分の2阻止」を叫んだために選挙結果は「3分の2が実現した」と報道されることになる。自らが争点にしたことで敗北したのだから誰か責任を取るのかと思ったら誰も責任を取らない。それでは野党は国民から信用されなくなる。

自分たちの「憲法改正阻止」がどれほど正しい主張であっても、それが国民に理解されなかったのであれば、謙虚にその事実を受け止め、国民の声に耳を傾け、その要求にこたえることから始めて信頼を取り戻し、それから国民に自分たちの主張を理解させる努力をすべきではないか。

今回の都知事選でも有権者には子育ての不安、老後の不安、東京オリンピックの不透明さ、政治とカネの問題などが関心事としてあった。ところが鳥越氏は参議院選挙で野党が争点化に失敗した「憲法改正阻止」を再び引きずる形で登場する。参院選で失敗した争点を復活させようとするのは国民に対する謙虚さが足りないと私は感じた。そのやり方では野党は絶対に選挙に勝てない。

選挙に勝とうとしない野党は野党ではない。55年体制下の野党はまさしく選挙に勝とうとしない野党であった。社会党は過半数を超える候補者を擁立せず、従って全員が当選しても政権は奪えない。ただ自民党はアメリカの言いなりに軍事的負担を増大させないため社会党の議席を3分の1以上にすることを心掛け、自民党の目に見えない協力もあって社会党は3分の1の議席を確保し続けた。それが護憲を強く主張させた原因でもある。

しかし社会党は本物の野党ではなかった。政権を奪わずに批判するだけなら評論家、学者、市民と同レベルで、与党からすれば権力を奪う野党が存在しない限り、政治の緊張感もなくなる。そのため政権交代を実現する政治が求められ、本物の野党を作るために苦労してきたのがこの20年余の日本政治である。

なりふり構わず権力を手放そうとしない与党が一方に存在し、それに対してなりふり構わず権力を奪おうとする野党が存在しないと、国民は不幸になるだけだ。与党が権力を手放そうとしないのは当たり前だが、選挙に勝とうとしない野党がまたぞろ現れてきたのでは話にならない。参議院選挙と東京都知事選挙の選挙結果を見て痛切に感じたのはそのことだ。

by めい (2016-08-02 03:20) 

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